そこが知りたい!成年後見人(後編)

前回は成年後見制度の概要を紹介しました。
今回は私の成年後見人としての1年のスケジュールを基に、実際の仕事についてお話ししたいと思います。私は土地や家の管理はしていないため、日常的な金銭の管理をすることを前提としています。※この記事は2020年1月末時点です。

後編:成年後見人の職務とは?

1. 成年後見人に選任されたら準備すること

成年後見人に選任されると、家庭裁判所に召喚されます。そこで手引きのパンフレットを受け取り、成年後見制度に関するVTRを鑑賞します。パンフレットには、各種提出書類の様式や記入例、事例も紹介されているので、大事に保管して必要なときに確認できるようにしておきましょう。

それでは、成年後見人として必要な準備をしていきましょう。

◎準備するもの

  • 出納帳
  • 認印として使う印鑑

私の場合、出納帳に関しては、父の入所している施設で出納帳を作成しているため、それを提出していただいています。印鑑は管理に自信がなかったので、私が普段から使っているものと同じものにしました。この印鑑は後見人の認印なので、本人名義の必要はありません。

2. 成年後見等選任後の初月:財産目録の提出

成年後見等に選任されたら、1カ月以内に被後見人の財産の状況を調べ、家庭裁判所に提出します。
これは、貯金や証券、負債に至るまでの全てを報告しなくてはいけません。
申告漏れがあった場合は、発覚した時点でパンフレットや法務局のホームページにある「連絡票」様式を使って裁判所へ知らせる必要があります。

3. 1年のスケジュール

成年後見人としての準備を整えたところで、私の1年間のスケジュールを紹介します。
成年後見人としての行動は家庭裁判所への報告義務があるため、しっかりと日頃から準備をしておかないと、この義務をきちんと果たせないことになりかねません。

5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
(被後見人の誕生月)
家庭裁判所への対応 必要があれば報告・相談※ 「後見事務報告書」
の提出
普段の対応 毎月:生活費の引出・振込・出納帳の確認
6カ月毎(金融機関で使用する場合の有効期限)
:成年後見登記の発行

※家庭裁判所への報告・相談のタイミング
選定されて最初の1カ月以内
毎年、被後見人の誕生月1日~末日までの間に1度
・責務の返済、高額な出費・収入がある場合
・被後見人の転居・死亡時
・後見人の死亡時

1年で最も重要になるのが、被後見人の誕生月に家庭裁判所へ提出する「後見事務報告書」です。選任後初月にも提出した財産目録に加え、収支の予定表、事務報告書を様式に沿って作成します。
成年後見に関わる作業を行った際の経費(被後見人の金銭を使用した支出)もこの時に報告するので、領収書またはレシートは必ず保存しておきましょう。
作成する際は、手引きのパンフレットに様式があるので、それをコピーして使います。
家庭用プリンターなど、印刷する手段がある場合は、家庭裁判所のホームページに様式ファイルのリンクが記載されているので、ダウンロードして使うこともできます。
私は父のいる施設から、エクセルデータで出納帳を、PDFデータでレシートの控えを送っていただいているため、署名捺印以外はパソコンで作成して印刷しています。

4. 金融機関への申告

被後見人が保持している通帳などがある場合、その金融機関へ成年後見等の届出を提出します。これによって財産の管理をすることができるので、できるだけ早いうちに済ませておきましょう。
契約時に使用する契約者の氏名は「●●(被後見人の名前) 成年後見人(あなたの登記項目) △△(後見人等の名前)」とします。被後見人の欄にはあなたが後見等をしている人の名前を書いてください。

◎金融機関への届出に準備するもの
・成年後見等の登記事項証明書(6カ月以内に発行したもの)
・被後見人の通帳等
・被後見人の通帳等の印鑑
・成年後見人等の写真付き身分証明書(住民カードや運転免許証等)
・成年後見で使用する印鑑

申告の際は、金融機関へ赴き「成年後見の届出をしたいのですが」と言えば、用紙を準備してくれます。

◎お金の引出・入金・振込時に準備するもの
・被後見人の通帳
・届け出た印鑑
・成年後見等の登記事項証明書
・成年後見人等の写真付き身分証明書

この時、対応してくれる行員によっては通常より少し時間がかかることがありますので、時間に余裕をもって訪れてください。
また、窓口での取引は届け出た成年後見人のみが可能です。カードを作ることができる銀行もあるようですが、私はお勧めしません。管理するものが増えれば、喪失や犯罪のリスクも増えることになりますので、成年後見人等の責務を果たせる形で管理しましょう。

5. 後見等事務報告書の提出

1年のスケジュールでもご紹介したように、被後見人の誕生月には毎年「後見等事務報告書」を家庭裁判所へ提出します。

◎家庭裁判所への提出物
・財産目録(様式あり)
・収支予定表(様式あり)
・後見等事務報告書(様式あり)
・前回提出時以降の通帳のコピー
・収支予定を裏付ける出納帳(直近1カ月)
・後見事務にかかった費用のレシート(印紙代や交通費等)
・その他の必要な証明書類

上記の提出書類を全て揃えてから、家庭裁判所の後見係へ郵送します。
郵送後、後見係の担当者から確認の電話が入ります。(書類が不足していた場合はこの時に教えていただけます)

私が実際に添付している書類は、これに加えて、父が加入している「認知症などがある人が他人を傷つけたときのための保険」の書類も添付しています。予定している高額な出費がある時には、この時点でそれに関する資料も添付します。

6. 「連絡票」の使用

家庭裁判所の後見係と連絡を取る場合には、「連絡票」を使用します。これも様式がパンフレットに入っているのと、各法務局のホームページでダウンロードできるので、それらを活用してください。連絡票を使う例は、パンフレットに記載されていますので目を通しておきましょう。
回答は裁判官が判決を出し、それを後見係の担当者が電話で伝えてくれます。

7. 実際に成年後見人をしている私の感想

私はフルタイムで会社に勤めながら、20代で成年後見人になりました。
結婚をして名字が変わり、妊娠・出産を経て、今は仕事・育児をしながら成年後見人をしています。
月に1日だけ有休や半休をとって父の後見人として銀行や施設に行きます。毎回その日はせわしないですし、レシートを保存したり、書類をチェックしたりするのはなかなか神経も使いますし、疲れます。
それでも、その日には2~3時間の自由な時間が取れるので、独身時代は友人とのランチや買い物に使ったり、子育てが始まってからはリフレッシュに使ったりできるので、ラッキーな日だと思うようにして過ごしています。
日頃、施設の方とのやり取りはありますが、基本的には父のことをするのは月に1日と決めているので、そこまで大変ではありません。

後見人をしてよかったなと感じるのは、施設で通いの介護士が入所者のお金を横領するような案件が出ても、父は1度も被害にはあっていないことです。
私が細かく管理しているからだと思いますし、やはりやり甲斐があります。
この先、いろいろなことがあるとは思いますが、私は家庭裁判所や会社、家族にも助けていただきながら、父を看取るまでは成年後見人としての役目を果たしたいと思います。

8. まとめ

いかがでしたでしょうか。
成年後見制度は法律関係者や施設を経営している法人が使うことも多いようですが、このように家族が利用することも十分可能です。
ご家庭によっていろいろなケースがありますが、成年後見制度も家族とのかかわり方の一つだと思います。
一言では言えないほどの沢山の責任や思いやりも必要になりますが、そのことも含めて、この記事がご家族と成年後見制度について考える機会になると幸いです。

*****今回こちらのコラムを書いていただいた方です*****

N.寺田。32歳。一回り年上の夫と1歳の長男の三人家族。将来5人家族を目指して、仕事も家庭も100%の毎日を送っています。